意識

書評ブログを始めてから、毎日一冊は本を読み切る習慣が出来てきた。

 

これは一年で365冊読み切る計算になってしまう。

床が抜けるのではないか不安である。

 

一冊アベレージが2000円とすると、2000×365=73万円である。

床が抜け、財布はすっからかんになるかもしれないと思うと地獄である。

 

が、これも自分で意識的に決めた習慣なので、文句をいうつもりはない。

 

 

今回の書評は珍しく小説をあげようと思う。

伊藤計劃著:「ハーモニー」

 

前々回の落合陽一氏の著書を紹介した際に、SFが好きという話をしたかと思う。

本書はSF「SFが読みたい! 2010年版」で第一位を獲得した。

同著者の処女作「虐殺器官」の後の世界を描いた物語である。

 

人々の健康状態、精神状態が健やかにあるよう管理されたユートピアにおいて、

意識とは何か、社会との調和において人々は幸せなのか、

 

ユートピアとはある人にとってのディストピアではないのか、

 

そんなことを考えさせられる物語である。

 

意識とは脳内のモジュールが行う会議のようなものである。

という表現は非常に興味深い。

 

物語の根幹にもかかわる内容なので、ここでは詳細は差し控えるが、

幸せな社会の中で息苦しさを感じている人も一定数いるのではないかと感じた。

 

筆者(ふじむ)も、数年前と今とでは世界の捉え方が全く異なる。

自分を押し殺し、自分の意思など表現することが許されないと感じてきた。

 

そういった意味では過去の自分と、本書のキーパーソンは対照的である。

 

伊藤氏が病床の中綴ったこの物語の中は、

主人公の霧慧トァン、

あるいは登場人物の御冷ミァハを通して、意思をもって強く生きること、

 

人間の本質的な欲求の一部にはそういったモジュールが存在するのではないか、

 

ということを感じさせてくれる。

 

 

ラストも印象的で、余韻の残る後読感である。

 

ぜひとも手にとって頂きたい。

 

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